性教育にピアカウンセリング

若い人の間に、性感染症や人工妊娠中絶が増えています。20歳代の人工妊娠中絶数は各年代に比べてもっとも多く、とくに20~24歳では18.8%にも及びます。また、15~19歳の10代の女性100人に1人程度が望まない妊娠をしてしまっていることも明らかになっています。さらに性感染症も広がり、女性では15~19歳では20人に1人が、20~24歳では15人に1人がクラミジアにかかっています。クラミジアに感染すると、エイズの感染率は3~4倍多くなり、女性では卵管が炎症を起こし、不妊の原因になってしまいます。

こうした状況は、「産まない」という選択以前に、「産めない」という選択の余地のない少子化につながり、300 年後には日本民族が滅亡するのはないか、とさえも噂されるほど。こうした事態に対し、性に関する正しい指導や情報、相談の試みが、各所で行われていますが、なかなか有効なシステムがみつからないのが現状。

そのなかで画期的なのは、性教育のピアカウンセリング。もともと1970年代のアメリカで「自立生活センター」の障害者たちが、自立を目指す障害者のために始めたもの。ピアカウンセリングの「ピア」とは、仲間という意味で、同じ背景をもつ人同士が対等な立場で話を聞き合うことであり、障害者ばかりでなく、薬物中毒や性教育など、さまざまなプログラムのなかで生かされています。

このピアカウンセリングを若者の性教育に提唱したのは、栃木県の自治医科大学看護短大の高村寿子教授。1991年、高村教授が各地でピアカウンセラーの養成講座を開催し、ボランティアグループをつくって普及にあたっていたところ、たまたまお膝元の栃木県は未成年者の人工妊娠中絶者がもっとも多いところでもあり、県や県教育委員会がピアカウンセラーを養成する事業を共同で進めることとなりました。

以後、その情報に興味を示した自治体がコンタクト、沖縄県、高知県、宮崎県などをはじめ、全国約10県で実施されています。国でも『健やか日本21』によって、母子保健をテーマに2001年から2010年までの10年間、深刻化する思春期の性に関して学習の機会を提供することを目標にし、ピアカウンセラーの養成とピアカウンセリングの実施などの思春期の子ども自身が主体となる取り組みを推進するとしています。

ピアカウンセリングは、対象者と同年齢か、少し年上のピアカウンセラーがあたります。たとえば、2月下旬、宮崎県内の高校では1年生の思春期教育の授業にピア・カウンセリングを取り上げました。このときにカウンセラーをつとめたのは大学生。大学生が生徒たちに将来の人生設計を立てさせた上で、「今妊娠したら、させたらどうするか」を考えてもらい、それぞれに意見を交換。ピアカウンセラーは「正しい」とか「間違っている」とかの判断は示さず、あくまでも自分の力で考えさせ、選択させるようリードしていきます。

また、実際に試験官を使ってコンドームの付け方を教えたり、 100%確実な避妊法はない、コンドーム以外の避妊法では性感染症は防げないことなどを、図表や写真などを使って訴えるなどの活動をしています。

大人から、親から、先生からの性教育とは違った視点で提示できるとして、学校教育での性教育を補完する役割をもつ試みとして、今、多くの自治体が注目する性教育のピアカウンセリングです。

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